霧が晴れて
いま、山梨県の山奥をバスに乗って進んでいる。あたりは霧。霧、霧。
まさに一寸先は霧といった感じで、5m先がすでに見えない。こんな中でも普通に進めるこのバスの運転手さんは、熟練の成せる技なのか、それとも無謀なのか。
そんな道を進んでいる中、音楽を聴きたくなってウォークマンをポケットから出して、イアフォンをつけた。
曲は、星野源の『フィルム』。名曲だ。
響くアコースティックに浸りながらふと顔をあげると、さっきまであんなに立ち込めていた濃霧が消えていた。むしろ、遠くの山々まで鮮明に見えた。
"ウォークマンで曲を選んでる刹那に"
僕はもしかして、バスに同じく搭乗した20人ほどの人達と一緒に、いつの間にか別の世界に来てしまったのかな?